最高裁判所第三小法廷 昭和24年(れ)2686号 判決 1950年3月28日
主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人徳岡二郎の上告趣意は、末尾に添えた別紙記載の通りである。
(一)論旨第一点は、原審判決は被告人に対して公務執行妨害の共犯であると認定しているがその証拠はない、というのである。しかし原判決擧示の証拠殊に被告人の原審公判における供述、被告人に対する司法警察官の訊問調書中の記載および原審証人佐藤誠一の供述により公務執行妨害について共謀があった事実が認められ得るのであって、論旨は理由がない。
(二)論旨第二点は、原審は担当三判事列席の上現場の検証および現場における証人訊問をしているのであるが、前回の公判において事実審理の大半をなしかつ右現場の検証等の決定をした裁判所の構成から判事二名の更送があったのであるから、公判を開いて公判手続の更新をしたのち現場の検証等をすべきであるのに、原審がその手続をしなかったのは違法である、と主張する。しかし、証拠決定の施行として、公判以外においてする証拠調は、公判準備手続であるから、判事の更替があっても審理の更新をする必要がないと解すべきであって(大正一三年(れ)第一九五号同年四月五日大審院第四刑事部判決参照)、論旨は理由がない。なお原審においては、その後の公判において審理が更新されている。
(三)論旨第三点は刑の量定に対する非難であって、上告の適法な理由にならない。
よって旧刑事訴訟法第四四六條に從い主文の通り判決する。
以上は当小法廷裁判官全員一致の意見である。
(裁判長裁判官 井上 登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 穂積重遠)